【睡眠負債と適切な睡眠時間③】睡眠負債の長期的な影響

本コラムは全5回に渡り「睡眠負債と適切な睡眠時間」についてお話しております。
先の投稿をお読みでない場合はぜひ順を追ってお読みください。

3. 睡眠負債の長期的な影響

睡眠時間が不足すると、私たちの体と心にはさまざまな悪影響が現れます。短期間の睡眠不足であっても、集中力や判断力の低下、情緒不安定、ストレスの増加などの症状が出ることがありますが、長期にわたると、さらに深刻な健康問題を引き起こします。

身体的影響

慢性的な睡眠不足による体の悪影響を確認してみましょう。日本国内の製造業工場に勤務する2,000名以上の男性を対象とした調査では、心筋梗塞や狭心症といった心臓疾患を発症するリスクは「6時間未満」の睡眠時間の場合、「6時間以上」の人に比べて4.95倍も高くなることが知られています1)。同様に40,000人以上の一般市民を対象とした調査では、睡眠不足の影響は心臓・脳の動脈だけではなく、高血圧症・糖尿病・脳血管疾患といったよく耳にする疾患の発症リスクも高めることが示されています2)

この他、睡眠不足は免疫やホルモンバランスにも影響を与え、短期的には感染症にかかりやすくなり、長期的には乳癌や前立腺癌をはじめとする、がん(=悪性新生物)にもかかりやすくなってしまいます。

1) Hamazaki Y, et al. The effects of sleep duration on the incidence of cardiovascular events among middle-aged male workers in Japan. Scand J Work Environ Health. 2011 :411-7.

2)Itani O, et al. Short sleep duration, shift work, and actual days taken off work are predictive life-style risk factors for new-onset metabolic syndrome: a seven-year cohort study of 40,000 male workers. Sleep Med. 2017 :87-94.

精神的影響

睡眠不足は、ストレスや不安感を増大させ、うつ病や不安障害などの精神的な問題を引き起こすリスクもあります。特に、長期間にわたる睡眠不足は、感情のコントロールが難しくなり、仕事や人間関係にも悪影響を及ぼすことが多いです。集中力や記憶力の低下も、日常生活において大きな障害となるでしょう。

次回:睡眠時間の確保・対処法

当院は日本睡眠学会専門医療機関として睡眠検査・評価を実施するための環境を整え日々多くの患者様の睡眠改善に取り組んでおります。睡眠に関するお悩みがございましたらお気軽にご相談ください。