『世界睡眠デー』と『睡眠の日』~質の良い睡眠が未来を変える-最新の睡眠医療とセルフケア~

はじめに:世界睡眠デー、睡眠の日とは?

世界睡眠デー(2025年は3月14日)睡眠の日(3月18日と9月3日)は、睡眠の大切さを考える日です。私たち医療法人RESMは、日々多くの患者様と向き合う中で、睡眠が健康に及ぼす深い影響を実感しています。睡眠の「時間」と「質」について考え直す良い機会として、この機会に皆さんの睡眠を見つめ直してみませんか?

1. 睡眠不足がもたらす影響

睡眠不足が続くことで、私たちの健康や日常生活に次のような悪影響が生じる可能性があります。

  • 生活習慣病のリスクが高まる 睡眠不足は肥満、高血圧、糖尿病などのリスクを増加させることが研究で明らかになっています(Reutrakul et al., 2018)。
  • メンタルヘルスへの影響 不十分な睡眠はストレス、不安、さらにはうつ病のリスクを高める可能性があります(Baglioni et al., 2016)。質の良い睡眠は精神的安定に寄与します。
  • パフォーマンスの低下 睡眠不足による集中力や判断力の低下は、学習や業務効率に深刻な影響を及ぼします(Lim & Dinges, 2010)。

2. 最新の睡眠医療の進展

  • 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の新たな治療法 従来のCPAP(持続的陽圧換気療法)に加えて、当院では、最近注目されている「インスパイア」などの舌下神経刺激療法の相談が可能です。(Kent et al., 2022)。
  • テクノロジーの活用 ウェアラブルデバイスを用いた睡眠の質の測定が普及しつつあり、デバイスが分析したデータを元に改善計画を立てることができます(Ko et al., 2019)。
  • 薬に頼らない治療 認知行動療法(CBT-I)を中心としたアプローチにより、薬物治療以外の選択肢が広がっています(van Straten et al., 2018)。

3. 今日からできる良質な睡眠習慣

より良い睡眠を得るために、以下の実践を取り入れてみてはいかがでしょうか:

  • スマホやPCは就寝1時間前から控える ブルーライトがメラトニン分泌に影響を与えるためです。(Chang et al., 2015)。このようなデバイスの使用しすぎには注意しましょう。
  • カフェインやアルコールを控える 就寝前の摂取は避け、体を自然な休息状態に導きましょう。
  • 眠る1時間半前に入浴をする 入浴により、深部体温の調整、血行改善等、より良い睡眠が促されます。
  • 規則正しい生活リズム 朝の光を浴びることで体内時計をリセットし、自然な睡眠を促します。
  • 夜にストレッチをする リラックスできるストレッチで副交感神経を活性化することができるのでおすすめです。あまりハードなトレーニングは逆効果です。
  • 心を温めるスープを飲む 例として、トマトスープやホットミルク入りスープなど、心と体をほぐす夜の一杯を習慣化することもよいでしょう。

おわりに

睡眠は「時間」だけでなく「質」が鍵です。科学的な知識を活かし、自分に合った睡眠習慣を見つけることが健康への第一歩となります。世界睡眠デーや睡眠の日をきっかけに、自分の睡眠について考え、健康的な生活を目指しましょう。

白濱龍太郎
医療法人RESM 理事長
慶應義塾大学先端科学技術研究センター 訪問准教授
日本ライフスタイル医学会 大会長

元論文名

  1. Reutrakul, S., & Van Cauter, E. (2018). Sleep influences on obesity, insulin resistance, and risk of type 2 diabetes. Metabolism.
  2. Baglioni, C., et al. (2016). Sleep and mental disorders: A meta-analysis of polysomnographic research. Psychological Bulletin.
  3. Lim, J., & Dinges, D. F. (2010). A meta-analysis of the impact of short-term sleep deprivation on cognitive performance. Sleep.
  4. Kent, D. T., et al. (2022). Hypoglossal nerve stimulation therapy for obstructive sleep apnea. Journal of Clinical Sleep Medicine.
  5. Ko, P. R., et al. (2019). Technology-based approaches for improving sleep. Current Opinion in Psychology.
  6. van Straten, A., et al. (2018). Cognitive and behavioral therapies in the treatment of insomnia: A meta-analysis. Sleep Medicine Reviews.
  7. Chang, A.-M., et al. (2015). Evening use of light-emitting eReaders negatively affects sleep, circadian timing, and next-morning alertness. Proceedings of the National Academy of Sciences.