夜間頻尿と睡眠時無呼吸|夜中のトイレの原因と受診の目安を睡眠専門医が解説

夜中に何度もトイレで目が覚めて、朝まで眠った気がしない。年齢のせいだと思って、そのままにしていないでしょうか。夜間頻尿の原因は、膀胱や前立腺だけとは限りません。いびきの裏に隠れた睡眠時無呼吸症候群が関わっていることもあります。この記事では、夜間頻尿の定義と3つの原因タイプ、泌尿器科を受診する目安、無呼吸で夜の尿が増えるしくみ、治療で変わる可能性を、動画の内容に沿って順に説明します。

まず押さえたい、夜間頻尿の4つのポイント

夜間頻尿は、尿の問題と睡眠の問題の両方から考えることが大切です。まず全体像を見ておきましょう。多くの場合は泌尿器科で診てもらうのが基本ですが、いびきや日中の眠気もある方では、睡眠時無呼吸症候群が隠れていることがあります。

夜間頻尿の4つのポイント。1 夜に排尿で1回以上起きる状態で特に3回以上は睡眠への影響が大きい、2 原因は多尿・夜間多尿・膀胱の3タイプと睡眠の問題、3 夜3回以上でつらいときや血尿・痛み・残尿感があれば泌尿器科へ、4 睡眠時無呼吸症候群が原因のこともあり治療でトイレの回数が減ることもある。

ここから先は、この4つを順番に説明します。気になるところから読んでも大丈夫です。

夜間頻尿とは?何回から問題になる?

夜間頻尿は、夜寝てから朝起きるまでの間に、排尿のために1回以上起きる状態を指します。下の図の左側が、その流れです。右側は、回数が増えたときに眠りと日中の生活へ出る影響を示しています。

夜間頻尿とは。夜に排尿のため1回以上起きる状態で、回数が増えると眠りが分断され、夜3回以上では日中の不調も出やすい。原因に睡眠時無呼吸症候群が隠れていることもある。

定義の上では1回でも夜間頻尿ですが、1回くらいならあまり困らない人もいます。実際に問題になるのは、回数が増えて眠りが妨げられている場合です。特に夜3回以上になると睡眠への影響が大きくなり、日中の眠気やだるさなど、昼の生活にも響きやすくなります。

夜間頻尿は年齢とともに増える、とても一般的な悩みです。だからこそ「年のせいだから」と片づけられがちですが、原因によって相談先も対策も変わります。

原因は、大きく3つのタイプに分けて考える

尿の量が1日中多いのか、夜だけ増えるのか、膀胱にためられないのか。夜間頻尿の原因は、この3つのタイプに分けると整理しやすくなります。図の下の帯にあるように、ここに睡眠の問題も加わります。

夜間頻尿の原因は大きく3つ。1 多尿は1日を通して尿量が多い、2 夜間多尿は夜の間だけ尿の量が増える、3 膀胱のためる力の問題は少しの量で尿意が出る。睡眠の問題も関係し、眠りが浅いと尿意で目が覚めやすい。

1. 多尿は、夜だけでなく1日を通して尿の量が多いタイプです。水分のとりすぎ、お酒やカフェインのとりすぎのほか、糖尿病が背景にあることもあります。

2. 夜間多尿は、1日の尿量はそれほど多くないのに、夜の間だけ尿が増えるタイプです。高齢の方では、夜間の尿量が1日全体の3分の1以上になる場合を指します。

3. 膀胱にためる力の問題は、少しの量で尿意が出るタイプです。男性の前立腺肥大症のほか、過活動膀胱や間質性膀胱炎など、男女ともに原因になる病気があります。ここは泌尿器科の専門領域です。

さらに、眠りが浅くてちょっとしたことで目が覚め、その結果トイレに行く人もいます。タイプは一つとは限らず、重なることもあります。どのタイプかを調べるには、排尿の時刻と量を記録する排尿日誌が役立ちます。

なぜ夜だけ尿が増えるのか

昼は平気なのに、なぜ夜になると尿が増えるのでしょうか。理由は一つではありません。代表的な4つの場面を図にしました。

なぜ夜だけ尿が増えるのか。加齢で尿を濃くする力が落ちる、日中に足にたまった水分が横になると体の中心へ戻り尿として出やすくなる、高血圧や心臓の状態が夜の尿量に関わることもある。

年齢とともに、腎臓が尿を濃くする力は落ちていきます。また、昼の間に足にたまった水分は、横になると体の中心へ戻り、夜に尿として出やすくなります。高血圧や心臓の状態が関わることもあります。

泌尿器科を受診する目安

回数だけで受診を決める必要はありません。つらさや生活への影響も合わせて考えます。次のような症状があるときは、一度泌尿器科への受診を考えてください。

泌尿器科に相談するサイン。血尿・排尿時の痛み、残尿感、男性は尿の勢いが弱い・出にくい、女性は尿もれ・骨盤の違和感。回数に関係なく早めに泌尿器科へ。

尿に血が混じる、排尿時に痛みがある、残尿感があるときは、回数に関係なく早めに泌尿器科を受診してください。大きな病気のサインのこともあるためです。

男性で尿の勢いが弱いときは、膀胱の少し下にある前立腺の問題かもしれません。女性で尿もれや骨盤の違和感があるときは、過活動膀胱や、子宮などが下がってくる骨盤臓器脱の可能性も考えます。どちらも自己判断せず、泌尿器科で調べてもらうのがいちばんです。

睡眠時無呼吸で、夜の尿が増えるしくみ

ここからが睡眠との関係です。呼吸と尿は、一見つながりがなさそうに見えます。カギになるのは、心臓から出るホルモンです。下の図は、左から右へ順に見てください。

無呼吸で夜の尿が増えるしくみ。のどがふさがり、息を吸おうとして胸の中が強い陰圧になり、心臓からANP(心房性ナトリウム利尿ペプチド)が出て、夜間の尿量が増える。

睡眠時無呼吸症候群では、眠っている間にのどがふさがって呼吸が止まります。それでも体は息を吸おうとするので、胸の中の圧力が強い陰圧になり、心臓に負担がかかります。すると心臓は、血液が増えすぎたと勘違いして、尿を増やすホルモンを出します。これがANP(心房性ナトリウム利尿ペプチド)です。その結果、夜の尿量が増えると考えられています。

さらに、無呼吸のたびに眠りが細切れになるため、眠りが浅くなります。尿が増えることと、小さな尿意でも目が覚めやすくなること。この2つが重なって、夜のトイレにつながると考えられています。

「トイレで起きた」のか「起きたからトイレ」なのか

夜中に目が覚めたとき、多くの人は「トイレに行きたくて目が覚めた」と考えます。でも、そうとは限りません。下の図の上段と下段で、順番を比べてみてください。

尿意で起きたのか、起きてからトイレに行ったのか。トイレに行きたくて目が覚める場合のほかに、実は無呼吸で目が覚めて尿意に気づき、ついでにトイレへ行く場合もあり、順番が逆のこともある。

検査の前の問診で「夜に何度もトイレに起きる」と話す方は少なくありません。そして検査をすると、無呼吸が見つかることもあります。本人はトイレのせいで目が覚めたと思っていても、実は無呼吸で目が覚めて、そのついでにトイレへ行っていることがあります。

睡眠時無呼吸を治療すると、夜のトイレは減る?

では、夜間頻尿の裏に睡眠時無呼吸症候群があった場合、治療をするとどうなるのでしょうか。代表的な治療がCPAP(シーパップ)です。鼻から空気を送ってのどを広げ、眠っている間の呼吸を整えます。

無呼吸の治療で改善することも。CPAPで鼻から空気を送ってのどを広げ、夜間のトイレが減った報告がある。心臓の負担やホルモンの出すぎを抑え、眠りが深くなることもある。効果には個人差があり、ほかの原因もあわせて確認する。

無呼吸が治まると心臓への負担が減り、利尿ホルモンの出すぎが抑えられます。眠りが深くなれば、尿意で目が覚めにくくなることも期待できます。

CPAPは、夜間頻尿そのものの治療ではなく、睡眠時無呼吸の治療です。夜のトイレがどこまで変わるかには個人差があり、ほかの原因が残っていることもあります。治療を始めたら、トイレの回数も一緒に記録しておくと、変化を確かめやすくなります。

尿と睡眠、両方の視点で相談する

夜間頻尿の多くは、まず泌尿器科で診てもらうのが基本です。そのうえで、睡眠の面からも見ることで、手がかりが増えることがあります。図は、その役割分担を示しています。

尿と睡眠、両方の視点で相談を。まずは泌尿器科で尿の症状・回数・尿量を相談し、いびきや日中の眠気があれば睡眠の専門外来にも相談する。泌尿器科・睡眠・内科が協力して原因に合わせて治療する。

泌尿器科を受診したものの大きな原因が見つからない、治療をしてもまだ困っている。こうしたときに、いびきや日中の眠気があれば、睡眠時無呼吸症候群が隠れていないか調べてみる価値があります。

受診の際は、夜に起きた回数と時刻のメモ、お薬手帳、家族から見たいびきや呼吸の様子があると、相談が進みやすくなります。尿の治療で飲んでいる薬を、自己判断でやめないようにしましょう。眠気が強いときは、運転を控えてください。

夜間頻尿は、泌尿器科、睡眠、内科など、いくつかの診療科が協力することで良くなっていくことがあります。「トイレの悩みだから」「年のせいだから」と一人で抱えず、まず相談してみてください。

夜中のトイレは、尿と睡眠の両方に関わる悩みです。血尿や痛みがあれば早めに泌尿器科へ。いびきや日中の眠気もあれば、睡眠の専門外来にも相談してみてください。

参考文献・出典

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断・治療に代わるものではありません。治療の内容や薬の調整は、症状や持病に応じて担当医にご相談ください。

下浦雄大

下浦 雄大

日本睡眠学会認定 総合専門医
日本医師会認定 産業医

RESM新東京スリープメディカルケアクリニック
副院長

📋 この記事の執筆者はコチラ

睡眠専門医が、あなたの「眠れない」に答えます。

山梨大学医学部卒業後、循環器内科での臨床経験を経て睡眠医療へ転身。現在はRESM新東京スリープメディカルケアクリニック副院長として、睡眠・循環器・産業医の3領域で診療中。一般クリニックでは対応困難な「過眠症」や「概日リズム睡眠障害」まで、科学的根拠にもとづいた支援を行っています。


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RESM新東京スリープメディカルケアクリニック 副院長 下浦 雄大 | 日本睡眠学会認定総合専門医  日本医師会認定産業医