【特別対談】心臓を守るための「眠り」の質
循環器内科×睡眠専門医の視点から紐解く、心不全・不整脈と睡眠時無呼吸の関係
医療法人RESMでは地域の基幹病院との密な連携を通じ、より高度な医療サービスの提供を目指しています。今回は、杏林大学医学部付属病院 循環器内科の河野隆志先生と当法人理事長の白濱龍太郎先生との対談をリモートで行いました。


1. 市民公開フォーラム「眠りと健康のはなし」を終えて
白濱先生: 本日はリモートでの対談、ありがとうございます。そして5月9日に杏林大学での市民公開フォーラムでご講演があったそうで、お疲れ様でした。本日の対談にタイムリーな内容でしたね。
河野先生: ありがとうございます。当日は「睡眠時無呼吸症候群を正しく知る —心臓病を防ぐためにできること—」というテーマでお話しさせていただきました。一般の方々の関心が非常に高く、「睡眠がいかに心臓の健康に直結しているか」という点に、多くの方が熱心に耳を傾けてくださったのが印象的でした。
白濱先生: そうだったのですね。循環器内科の最前線でも、やはり睡眠の問題を抱えている患者さんは多いのでしょうか。
河野先生: はい、非常に多いです。特に心不全の患者さんの約5割から7割近くに、何らかの睡眠呼吸障害があると言われています。循環器内科医の間でも、心筋梗塞や心不全の治療において、その背景にある睡眠を管理することの重要性が指摘されています。
2. 睡眠時無呼吸が心臓に与える「三重苦」
河野先生: SASが心臓に悪い理由は、市民公開講座でも触れましたが、主に3つのメカニズムがあります。
- 低酸素血症: 寝ている間に酸素が足りなくなると、心臓の筋肉(心筋)に強いストレスがかかります。
- 交感神経の活性化: 無呼吸から呼吸が再開する際、脳が「危機」を感じて覚醒し、交感神経が昂ります。これにより血圧が急上昇し、寝ている間も心臓が「全力疾走」しているような状態になります。
- 胸腔内圧の変化: 塞がった気道で必死に息を吸おうとすると、胸の中が強い陰圧になります。これが物理的に心臓の壁を引っ張り、心室への負荷を増大させます。
白濱先生: この「三重苦」が毎晩繰り返されるわけですから、心臓が悲鳴をあげるのは当然ですね。まさに「循環器疾患の川上」に睡眠があると言えます。
3. 新たな課題「COMISA」— 不眠と無呼吸の合併 —
白濱先生: 最近、睡眠時無呼吸症候群(SAS)と不眠症が合併する「COMISA(コミサ)」という概念が注目されています。先生もこれまで心疾患患者さんの睡眠の質について研究されてきたと伺っていますが、どのように捉えていらっしゃいますか。
河野先生: その点は非常に重要と考えています。SASの患者さんは「夜中に目が覚める」「熟睡感がない」といった不眠の症状を訴えることが多々あり、この両方が合併していると、心血管疾患のリスクがさらに高まるということが知られています。
白濱先生: 不眠があるからといって睡眠薬だけで解決しようとすると、かえって無呼吸を悪化させてしまうケースもあります。まずSASという根本的な原因を精査し、その上で不眠の治療(認知行動療法など)を組み合わせる。この多角的なアプローチこそが、患者さんの心臓を守ることに繋がるのではないかと考えています。
4. 心房細動(不整脈)とCPAP治療の重要性
白濱先生: 不整脈、特に「心房細動」の治療においても、この連携は欠かせないですね。
河野先生: その通りです。心房細動のカテーテル・アブレーション治療を行っても、背景にあるSASを放置している患者さんは再発率が有意に高いというエビデンスがあります。逆に、CPAP(持続陽圧呼吸療法)で適切に睡眠を管理している方は、治療の成功率が安定します。
白濱先生: 私たち睡眠専門医の役割は、河野先生のような循環器専門医の先生方が整えた心臓のリズムを、良質な睡眠によって守り続けることだと考えています。
5. 病院(大学病院)とクリニック(RESM)の連携の意義
白濱先生: 当法人でも、大学病院をはじめとした地域の基幹病院との連携を最優先事項としています。高度な急性期治療を終えた後の、日常的な睡眠管理やCPAPのフォローアップですね。
河野先生: 循環器内科の外来では、睡眠の細かな生活指導や、CPAPデータの緻密な解析に割ける時間には限りがあります。RESMさんのように専門スタッフが揃い、睡眠障害に対し「伴走型」の医療を提供してくれるクリニックは、大学病院にとっても非常に心強い存在です。
6. 患者さんへのメッセージ
河野先生: 「血圧が下がりにくい」「動悸がする」「日中の強い眠気や疲れ」がある方は、ぜひ睡眠を見直してください。心臓病の予防も治療も、まずは「良い眠り」を知ることから始まります。
白濱先生: ありがとうございます。これからも河野先生のような専門医の先生方と手を取り合い、地域全体の健康を守るための睡眠医療を追求していきたいと思います。
【対談者プロフィール】
- 河野 隆志 先生
杏林大学医学部付属病院 循環器内科 臨床教授
- 白濱 龍太郎 先生
医療法人RESM 理事長
本記事は、白濱先生と河野先生のリモート対談内容を編集・構成したものです。
