PSG検査(終夜睡眠ポリグラフ)レポートの見方をやさしく解説
1. はじめに:検査結果を「わかる」ことの大切さ
睡眠の質に悩み、来院される方はそう多くはありません。なかなか寝付けなかったり、夜間に何度も目を覚ましてしまって困っているのに受診するのは不安と感じることが多いことと感じています。睡眠の医院にいってどんな検査をおこなうのか?検査によってどんなことが解決するのか?それがはっきりしないとなかなか受診にはつながらないでしょう。
「PSG(終夜睡眠ポリグラフ)検査」は、睡眠専門医院でよく用いる検査です。
検査には入院の必要があり、8時間以上の様々な検査項目を扱うため、結果用紙である「PSG検査レポート」は数日後にお渡しします。
しかし、このレポートを初めて見る方にとっては、専門用語や数値が多く、「一体何が書かれているのかよく分からない」と感じることも多いかと思います。
当院でも、診察時にできるだけ分かりやすくご説明するよう努めていますが、診察時間の都合もあり、どうしてもすべてを細かくお話しできないこともあります。そこでこのコラムでは、PSGレポートの基本的な読み方を解説し、ご自身の睡眠状態をより深く理解していただく一助となればと考えています。
2. PSG(終夜睡眠ポリグラフ)検査とは?
PSG(Polysomnography:終夜睡眠ポリグラフ)検査とは、睡眠中の身体のさまざまな生理的な変化を一晩かけて記録・分析する検査です。

- 脳波(睡眠の深さを評価)
- 眼球の動き(REM睡眠の検出)
- 筋電図(顎や脚の筋肉の動き)
- 呼吸の流れや努力(無呼吸の検出)
- 血中酸素飽和度(SpO₂)
- 心電図(心拍のリズム)
- 体位やいびき音など
これらの情報を組み合わせることで、どのくらい深く眠れているか、呼吸に問題があるか、夜間にどれくらい目が覚めているかといった点を詳細に知ることができます。
・どんな格好で検査するのか?
・検査のタイムスケジュールが知りたい
といった内容にお答えするべく、「睡眠ポリグラフ検査(PSG)とは:睡眠専門医療機関だから可能な精密検査」についてもコラムを記載しております。ぜひご覧ください。

これらすべてのデータがレポートとしてまとめられ、後日診察で説明を行います。しかしその内容は専門的な用語や略語も多く、一見しただけではわかりづらいものです。このため、次章以降では、実際のレポートに登場する構成や数値についてお伝えしていきます。
3. 実際のレポートの全体構成を把握しよう
PSG検査の結果レポートは、さまざまな情報が詰まった“睡眠の記録”です。医療機関や機器の種類によって若干の違いはありますが、当院では以下のような構成になっています。
※結果説明で特に重点的にお話しする内容は「4. 重要な指標の読み方と意味」でお話しするので、読み飛ばしながらでも構いません。

①お名前、診察券番号、生年月日、計測日など
②睡眠に関する内容
用語 | 内容 |
総就床時間(TIB: Time in Bed) | 部屋を暗くしてベッドで横になっていた時間 |
睡眠時間(SPT: Sleep period Time) | 初めに睡眠を確認してから検査終了時までにかかった時間 |
総睡眠時間(TST: Toal Sleep Time) | 実際に眠っていた時間 |
中途覚醒時間(WASO: Wake time After Sleep Onset) | 初めに眠った後の時間帯で目が覚めていた時間の合計 |
睡眠効率(S.E: Sleep Efficiency) | 暗室で横になっている間、何%の時間を眠って過ごしたか |
睡眠潜時(Sleep Onset) | 計測開始から最初に眠るまでの時間 |
REM潜時 | 初めに眠ってから、REM睡眠に至るまでにかかった時間 |
睡眠ステージ | 総睡眠時間のうち、レム睡眠、ノンレム睡眠(N1,N2,N3)がそれぞれ何%ずつであったか |
③睡眠中の呼吸・体動などに関する内容
用語 | 内容 |
覚醒反応指数(Arosal Index) | 睡眠時間中に目が覚めたと検知された回数(1時間当たり) |
無呼吸低呼吸指数(AHI: Apnea Hypopnea Index) | 睡眠時間中に起こった、無呼吸・低呼吸の回数(1時間当たり) ※下に書いてあるAIとHIの合計 |
無呼吸指数(AI: Apnea Index) | 睡眠時間中に10秒以上息が止まっていたと検知された回数(1時間当たり) |
低呼吸指数(HI: Hypopnea Index) | 睡眠時間中にいびきのように呼吸の制限があり、低酸素状態になった、または目が覚めてしまった回数(1時間当たり) |
SpO2低下指数 (3%ODI: 3% Oxygen Desaturation Index) | 睡眠時間中に血中酸素飽和度が3ポイント以上低下した回数(1時間当たり) 例)97%だったのに、いびきをかいていて94%まで血中酸素飽和度が低下した |
SpO2 90%> | 血中酸素飽和度が90%未満となっていた分数 |
呼吸イベントに伴う最低SpO2 | センサー不良によってもSpO2低下を認める場合もあるため、低呼吸・無呼吸に伴って認めた最低の血中酸素飽和度 |
いびきの割合(%TST) | 総睡眠時間の間にいびきを感知した時間の割合 |
周期性四肢運動障害指数 PLMS index PLMS: Periodic Limb Movement in Sleep | 睡眠時間中に脚が周期的に動いている検知された回数(1時間当たり) |
4. 重要な指標の読み方と意味
レポートの多くは、専門職が読み解けるように設計されています。そのため、略語や専門用語が多く並び、初めて見ると戸惑うのも当然です。このコラムでは、次章からそれらの主要な項目を一つずつ解説しながら、どのように読み取るか、何を意味するのかを説明していきます。
PSGレポートに記載されている数値の中でも、とくに重要なものが「睡眠の深さ(睡眠段階)」と「無呼吸の頻度(AHI)」です。この章では、それぞれの見方や意味、どこに注意を向けるとよいかをご説明します。
下記の画像が「ヒプノグラム」を含めた8時間分の検査レポートです。
ヒプノグラムとは脳波によって分類した睡眠の遷移図のことです。上から2番目の段に記載されており、WK, REM, N1, N2, N3の推移が記載されています。

以下では睡眠段階をはじめ、診察結果の説明の際によく触れる用語についてお話していきます。
4-1. 睡眠段階(ステージ)の割合
睡眠は「ただ眠る」だけではなく、いくつかの段階(ステージ)に分かれて繰り返されています。主に次のように分類されます。
睡眠段階 | 内容 | 基準となる割合 |
N1 | うとうとした浅い眠り。 | 2-5% |
N2 | 脳はある程度休み始める。 | 40-55% |
N3 | 深い眠り。身体の回復や成長ホルモンの分泌のきっかけにもなる | 10-25% |
REM | 夢を見ることが多い。記憶や感情の整理に関与する | 20-25% |
※N1-N3の睡眠をNREM(ノンレム)睡眠と総称します。
評価のポイント:深い睡眠とREM睡眠がバランスよく入っているか
- N3(深い眠り)が極端に少ない → 身体の回復が不十分かもしれません。
- REMが短すぎる → 記憶や感情の整理に影響する可能性があります。
- 睡眠全体が「N1〜N2」に偏っている → 質の浅い睡眠が続いていることを示しています。
ノンレム睡眠(N1-N3)は数字が大きいほど深い眠りを指します。一方でREM睡眠は全く別の睡眠です。
4-2. AHI(無呼吸低呼吸指数)
AHI(Apnea-Hypopnea Index)は、1時間あたりに起こる無呼吸・低呼吸の回数を示す指標で、睡眠時無呼吸症候群の重症度を評価する際に非常に重要です。

一例として閉塞性無呼吸の所見をお示します。気流センサーから呼吸の停止(赤色部分)が57秒持続していることが読み取れます(10秒以上持続すると呼吸イベントとしてカウント)。これだけでも無呼吸を指摘する十分な所見ですが、血中酸素飽和度(SpO2)を確認すると98%→89%まで低下しており、無呼吸によって低酸素状態になっていることがよくわかります。
ポイント:AHIと重症度の目安

- 数値が高いほど、睡眠中に呼吸が妨げられている時間が長いことを示します。
- 重度になると、心血管疾患や日中の強い眠気、集中力の低下など、生活の質に大きな影響を与える可能性があります。
見方のコツ
- AHIの内訳として、OAI(閉塞性)・CAI(中枢性)も2枚目以降に記載されています。原因に応じて治療法も異なります。
- また「体位ごとのAHI」や「REM睡眠時のAHI」なども掲載しており、仰向け寝やREM睡眠中に悪化するパターンが見つかることもあります。
睡眠時無呼吸症候群とその治療法については下記の記事もチェックしてみてください。

※このあたりの詳細なレポートは患者様一人ひとりの結果に応じて治療判断が異なりますので、医師診察にて必要に応じてお話をしております。
4-3. SpO₂(血中酸素飽和度)
SpO₂は、血液中にどれだけ酸素が取り込まれているかを示す値で、パルスオキシメーターで測定されます。
指標 | 意味 |
平均SpO₂ | 睡眠全体を通しての平均値(通常95-98%程度) |
最低SpO₂ | 睡眠中に記録された一番低い値(90%を切ると要注意) |
SpO2低下指数(3%ODI) | 血中酸素飽和度が3ポイント以上の低下した回数(1時間当たり) |
評価のポイント
- 無呼吸や低呼吸によって、SpO₂が急激に低下することがあります。
- 90%以下が何度も出ている場合は、睡眠中に十分な酸素が脳や体に届いていない可能性があります。
4-4. 覚醒と中途覚醒
睡眠中、短時間に目が覚めることは誰にでもありますが、頻度が多くなると、睡眠の質に影響が出てしまいます。
指標 | 内容 |
覚醒反応指数 | 睡眠時間中に目が覚めたと検知された回数(1時間当たり) |
中途覚醒時間(WASO) | 初めに眠った後の時間帯で目が覚めていた時間の合計 |
評価のポイント
- 覚醒時間が長い場合、実際の睡眠時間が短くなっていることを意味します。
- 無呼吸や四肢運動が原因で何度も目が覚めていることが分かるケースもあります。
※このあたりの詳細なレポートは患者様一人ひとりの結果に応じて判断が異なりますので、医師診察にて必要に応じてお話をしております。
4-5. 睡眠効率(Sleep Efficiency)
睡眠効率とは、実際に寝ていた時間(総睡眠時間)が、ベッドにいた時間(総就床時間)のうちどれくらいだったかを示す指標です。

指標 | 目安 |
85%以上 | 良好な睡眠効率 |
75〜85% | 基準値範囲内だが、やや効率が悪い可能性 |
75%未満 | 入眠困難や中途覚醒が多い可能性あり |
評価のポイント
- 睡眠効率が低い場合は、寝つきが悪い・途中で何度も起きていることが示唆されます。
- 睡眠の質の低下を意味し、不眠症をはじめとする睡眠疾患の可能性を考えます。
まとめ:それぞれの指標が示す“眠りの質”
PSGレポートに記載される数値は、どれか1つだけでなく、複数の項目を関連づけて見ていくとより理解が深まります。
例)
- AHIが高く、SpO₂が低下も目立つ → 呼吸の問題が強く、夜間に覚醒している可能性
- 睡眠効率が低く、N3やREMが極端に少ない → 浅い眠りが多く、なんらかの要因で睡眠の質が低下している
各指標の「つながり」を見ることで、睡眠の質をより立体的に理解することができます。
5. よくある質問例と解説
「AHIが30って書いてあるけど、これは悪いの?」
→ AHIが30以上は“重度”の睡眠時無呼吸症候群に該当します。夜間の呼吸障害が強く、CPAP療法が推奨される水準です。脳卒中や心筋梗塞などの発症リスクが高くなるため、AHIが20以上からCPAPの適応となります。
「SpO₂が80%台まで下がっていたのですが…」
→ 通常安静時の酸素飽和度は95%以上が望ましいですが、80%台は酸素不足の状態です。低酸素状態となっている原因を調べる必要があります。多くの場合睡眠時の無呼吸によって引き起こされます。
「N3(深い眠り)がほとんどないのですが、大丈夫ですか?」
→ N3は体の回復に関係する深い睡眠です。加齢によって減少していきますが、極端に少ない場合は眠りが浅くなっているサインのひとつです。睡眠時無呼吸症候群など睡眠疾患によってN3が全く認められないという方もいます。
「REM睡眠が短いと、どういう影響がありますか?」
→ REMは感情や記憶の整理に関係しているとされ、短すぎると日中の集中力や気分に影響することがあります。睡眠関連疾患により、頻繁に中途覚醒が起こるとREM睡眠が短くなることもよく経験します。
「中途覚醒が何度もあるとどうなりますか?」
→自分では気が付かなくても息が止まる、また足がぴくぴくと動いてしまう、といった影響で目が覚めてしまうことがよくあります。睡眠が分断されることで熟眠感が欠如し、結果として日中の眠気や疲労感につながることがあります。
「睡眠効率が70%と書かれています。これは悪いですか?」
→ 睡眠効率の基準は75-97%とされており、70%はそれに比べて低い水準です。入眠しづらい、夜中に目が覚めやすいなど不眠の関与が考えられます。
「PLMS(周期性四肢運動)が多いと言われました。治療が必要ですか?」
→ 周期性四肢運動は、眠りを分断してしまう原因になります。症状の程度によっては治療がすすめられることもあります。当院での結果説明時には原因精査および薬物加療を患者さんと相談していきます。
REM睡眠は浅い眠りですか?
ノンレム睡眠(N1-N3)は数字が大きいほど深い眠りを指します。一方でREM睡眠は全く別の睡眠です。REM睡眠をNREM睡眠と比較することにあまり意味はありません。REM睡眠の際に目が覚めやすいことの影響のようですが、REM睡眠は良好な睡眠構築に不可欠な要素です。REM睡眠が長いほど、眠りが浅いというわけではありません。
6. レポートから見える「眠りのクセ」とは?
PSGレポートには、数字だけでなくその人特有の「眠りのパターン」が現れます。この章では、患者さんが自覚しづらい「睡眠のクセ」や生活へのヒントを読み解くための視点を紹介します。
6-1. 呼吸イベントの「偏り」に注目する
- 仰向けでだけAHIが高い → 体位性の無呼吸が疑われる
- REM睡眠時にだけAHIが上がる → REM関連の無呼吸タイプ
➡ こうしたパターンから、「横向き寝が有効」「CPAPの圧設定の見直し」などのアドバイスにつながります。
6-2. 睡眠の「分断」傾向を見る
- 睡眠中の覚醒が多く、N3(深い眠り)やREM睡眠が少ない
- 無呼吸・低呼吸が集中している時間帯がある。
- SpO₂の低下が続いている時間帯がある。
➡ これらは、眠りが十分に“整っていない”サインです。睡眠疾患への対処と共に、生活リズムや寝具、照明、ストレス管理などの見直しが有効になることもあります。
6-3. 「眠れているつもり」と「実際の睡眠」の差
患者さんの中には、「8時間寝ているのに疲れが取れない」とおっしゃる方もいます。こうしたケースでは、
- TIB(ベッドにいた時間)は長いが、TST(実際に眠っていた時間)が短い
- 入眠までに30分以上かかっている
- 夜間に何度も覚醒している
といった点がレポートから読み取れることがあります。「寝床にいる=休めている」とは限らないという気づきにつながります。
6-4. 睡眠の質を高めるヒントを見つける
PSGは診断のためだけでなく、よりよい睡眠へのヒントを得るためにも使えます。
- 深い眠りを増やすために、定期的な運動に取り組んでみる
- 就寝前のデジタル機器の使用方法を見直す(ブルーライトカットの眼鏡の使用、 SNSの視聴時間の制限など)
- 就寝近くの飲酒、喫煙、カフェイン接種は睡眠の質を悪化させます。
こうした提案は、PSGのデータを元に個別に考えることで、より実行しやすい改善策として伝えることができます。
7. PSG検査を受けたあとの過ごし方と注意点
PSG検査を通じて、これまで自分では気づきにくかった「眠りの質」が数字やグラフで見えるようになります。この章では、検査結果を受けてどのように日常生活を見直すか、どんなタイミングで治療や再相談が必要かなどを、いくつかの視点からご紹介します。
7-1. 「診断結果=終わり」ではありません
PSGレポートを渡されたとき、「思ったより悪くなかったから安心した」と感じる方もいれば、「数字を見てもよく分からず、不安が残る」という方もいます。
しかし、大切なのはここからです。
検査結果は、あなたの「その日の」睡眠を反映しているものにすぎません。長期的な睡眠のクセや不調の背景を理解し、今後にどう活かすかが重要なのです
PSGは、あくまで睡眠における「現在地」の確認作業です。どこへ進むかは、患者さんご自身と医療者が一緒に考えていくものです。
7-2. 治療が必要な場合とは?
PSGで得られた数値をもとに、治療の必要性が判断されることがあります。たとえば
状況 | 推奨される対応 |
AHIが20以上であり、無呼吸による睡眠の質の悪化を感じている | CPAP(持続陽圧呼吸療法)やマウスピース治療の検討 |
AHIは軽度だが、日中の強い眠気がある | ライフスタイルの見直し |
睡眠効率が低く、不眠傾向が強い | 睡眠衛生指導や薬物治療等のフォローアップ |
治療を始めた場合も、定期的な経過観察が重要になります。
7-3. 日常生活で意識できること
検査後すぐに治療が必要でない場合でも、眠りの質を高めるための生活改善はとても有効です。
起床時間を一定に保つ
実は、同じ時刻に眠ることはなかなかむつかしいのです。コツは起床時間をそろえることです。目が覚めて、太陽の光が網膜の奥に伝わることで体内時計がリセットされます。また、朝ごはんの時間を一定にすること、起床後にラジオ体操やストレッチなどを行い全身の血行を良くすることも体内時計の調整に効果的です。
寝る前にスマホやPCを長時間見ない
スマホやPCから発せられる光は、体内時計に影響を与えやすい波長の光(=ブルーライト)が多く含まれるため注意が必要です。ブルーライトカットの眼鏡を着用するなど注意しましょう。スマートフォンで確認する内容にも注意が必要です。SNS(YouTube、X、Instagramなど)は毎日の視聴傾向を確認しあなたにとって魅力的なコンテンツを提供してくれます。ベッドでそういったコンテンツを見てしまうと、その日眠れないだけでなく、「ベッド=SNSを見るための場所」となってしまい今後の不眠の原因となってしまうため注意が必要です。
寝室の照明・温度・音環境を見直す
豆電球ほどの光や、BGM(特に人の声が含まれるもの)で眠りが浅くなることもあります。睡眠にお悩みの方は部屋を極力暗くし、静かな環境がよいでしょう。
睡眠障害のない人を対象とした研究によると、多少寒くても眠りへの影響はありませんが、暑い環境では睡眠効率の低下を招きます。「暑がりさん」と「寒がりさん」が一緒に眠ることになった場合は、室温は低めに設定し、布団で調整する方がよいでしょう。
就寝前にカフェイン・アルコールを控える
カフェインは言わずもがな、アルコールも眠前は控えてください。アルコール自体は入眠を促す作用がありますが、アルコールの代謝産物(=アセトアルデヒド)は悪心や頻脈を引き起こし、眠りの質を悪化させます。快眠のためにはカフェインもアルコールも眠る2時間前までには控えましょう。
運動習慣を取り入れる
定期的な運動習慣は快眠の味方です。屋外での散歩・ジョギングを取り入れるようになって快眠できるようになった方と何名も出会ってきました。
特に、有酸素運動は即効性もあり勧めです。汗ばむ程度の運動に30分以上取り組むようにしてみましょう。
7-4. こんなときは再相談を
一度PSG検査を受けた方でも、以下のような変化がある場合は、医師への再相談が勧められます
- 市販の眠剤など試したが、日中の眠気が改善しない
- 数年前の検査以降、体重の増加・生活習慣の変化(勤務時間の変化、転職など)があった
- いびきや無呼吸が悪化していると周囲からの指摘が増えた
PSGは1回限りではなく、必要に応じて再評価することで、睡眠の質の変化を客観的に追いかけることができます。
おわりに:あなたの眠りを「見える化」する意味
PSG検査は、ただの「数値」ではなく、あなたの体がどう眠っているかを丁寧に記録した“睡眠の現在地”です。今いる位置が不適切だったとしても、適切な位置へ移動することも十分可能です。
眠りは体と心の土台。だからこそ、「睡眠の見える化」によって得られた情報を上手に活かすことが、健康な毎日への第一歩になります。
忙しい日々のなか、睡眠のことは後回しにされがちですが、「眠れない」「眠った気がしない」と感じたときは、どうか遠慮なくご相談ください。