スマートウォッチの睡眠は正確?PSGとの違い
RESM / 動画でわかる睡眠のこと
朝、時計に出た「深い睡眠が少ない」「睡眠スコアが低い」という表示が気になることはありませんか。スマートウォッチは毎日の眠りを振り返る便利な道具です。何を測り、どこまで分かるのか。動画で紹介したPSGとの違いや、数字との付き合い方を見ていきましょう。
スマートウォッチは何を測っている?
一般的な手首のスマートウォッチは、加速度センサーで体の動きを、光学センサーで脈の変化を捉えています。機種によっては、血中酸素飽和度(SpO₂)に相当する値も表示します。一方、頭に電極をつけて脳波を記録しているわけではありません。

画面に出る「浅い睡眠」「深い睡眠」「レム睡眠」は、複数の情報を機種ごとの解析方法に当てはめた結果です。睡眠段階の表示は、脳波から判定した結果ではなく、センサーの情報からの推定です。心拍が低ければ必ず深い睡眠、という単純な対応でもありません。
たとえば、布団で静かに横になりスマートフォンを見ている時間が、睡眠に数えられることがあります。反対に、寝返りなどの動きを覚醒と判定することもあります。ご本人の記憶と違っていても、それだけでどちらかが間違っていると決める必要はありません。
PSGとスマートウォッチは役割が違う
終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)では、脳波・眼球運動・筋肉の活動に加え、鼻や口の空気の流れ、胸腹部の動き、酸素の値、心電図などを記録します。睡眠段階を判定し、呼吸の停止や脚の動きが睡眠を妨げていないかを調べます。次の図のように、日常の記録と精密な検査にはそれぞれ役割があります。

スマートウォッチ
記録するもの
体の動き・脈など。対応機能は機種によって異なります。
役立つ場面
普段の就寝・起床のリズムを、長期間振り返る。
読み方の注意
睡眠段階や時間は推定値。病気の確定診断の代わりにはなりません。
PSG
記録するもの
脳波・目や筋肉の活動・呼吸・酸素など。
役立つ場面
睡眠段階や呼吸の異常を詳しく評価し、診断や治療方針に役立てる。
読み方の注意
通常は一晩の記録を評価します。症状により再検査や別の検査が必要な場合もあります。
PSGは施設内で受ける方法のほか、適した方には在宅で行う方法もあります。また、不眠の相談をした全員がPSGを受けるわけではありません。問診や睡眠日誌から、調べる必要のあることを選びます。
得意なのは、毎日の変化をつかむこと
毎日つけられるスマートウォッチの強みは、日による違いが見えることです。「仕事が忙しい週は寝る時刻が遅い」「休日は起きる時刻が大きくずれる」など、生活の中で繰り返す変化を振り返れます。
記録から見つけやすいこと
- 睡眠時間が短くなる日の傾向
- 就寝・起床時刻のばらつき
- 平日と休日の違い
- 生活が変わった前後の変化
数字だけでは決められないこと
- 一晩の睡眠段階の正確な内訳
- 不眠症や無呼吸の確定診断
- 別の機種との点数の優劣
- 静かに起きていた時間の長さ
一日の点数より、同じ機器で続けて記録した傾向を見ると役立ちます。寝床に入った時刻、起きた時刻、昼寝や眠気もメモすると、時計の表示と生活を結びつけやすくなります。正確な分数を確かめるために、夜中に何度も時計を見る必要はありません。
血中酸素とCVHRは、無呼吸に気づく手がかり
血中酸素の低下や、無呼吸の可能性を知らせる通知は、受診を考える手がかりになります。ただし、装着状態や体の動きなどでも値は変わります。一度の低い値だけで無呼吸と決めず、繰り返す変化と症状を医療機関に伝えてください。
動画では、心拍にも手がかりがあることを紹介しました。無呼吸に伴って心拍数の増減が繰り返される現象を、CVHR(周期性心拍変動)と呼びます。次の図は、呼吸の変化と心拍の周期的な変化の関係を示しています。

心電図を解析した研究では、1時間あたりのCVHRの回数と、無呼吸・低呼吸の回数を示すAHIとの関連が報告されています。ただし、両者は同じ値ではなく、脚の動きなどによって結果がずれる場合もあります。
脈を測れることと、無呼吸を評価する機能があることは別です。心電図を用いた研究の結果が、そのまますべてのスマートウォッチに当てはまるわけではありません。
ホルター心電図は長時間の心電図を記録する検査です。対応した解析でCVHRを調べることがありますが、それも無呼吸を疑うための補助です。時計の通知がないことや酸素の表示が正常なことだけで、睡眠時無呼吸を否定することはできません。
知りたいことから機能を選ぶ
購入するときは、まず「何を知りたいか」を決めましょう。睡眠時間や生活リズムを知りたいなら、記録の見やすさや続けやすさが大切です。医師に見せたい場合は、履歴の保存や共有の方法も確認しておくと便利です。
- 生活リズムを知りたい:就寝・起床時刻や週ごとの変化を見られるか。
- 酸素の変化が気になる:SpO₂に対応しているか、睡眠中にどのように記録するか。
- 無呼吸の通知を使いたい:専用機能の有無、対象となる年齢や利用条件、国内での提供状況を確認する。
- 長く使いたい:装着感、充電の頻度、データを取り出せるかを確認する。
機能名が似ていても、測定する項目や解析方法は同じとは限りません。「心拍変動を表示できる」だけで、無呼吸の通知機能があるとは判断しないでください。機種やソフトウェアごとの公式説明を確認しましょう。
睡眠の完璧主義から少し離れる
よく眠れたと思ったのに、低い点数を見て急に心配になる。点数を上げようと早く寝床に入り、かえって眠れなくなる。動画の最後では、こうした「睡眠の完璧主義」に触れています。
睡眠の記録を良くしようとするこだわりが、眠りへの不安を強める状態は、研究ではオルソソムニアと表現されています。時計を使う人すべてに起こるものではありませんが、記録を見るたびにつらくなるなら、使い方を少し変える余地があります。

朝の休養感、日中の眠気、集中力や気分を、スコアと一緒に振り返りましょう。高い点数でも、困っている症状が続くなら相談する理由になります。
スコアの確認を週単位にする、通知を減らす、しばらく睡眠測定を休む、といった方法もあります。数字のために寝床で過ごす時間を延ばすより、日中をどう過ごせたかを振り返ってみてください。いびきや呼吸の停止を指摘されている場合は、日中元気でも相談して構いません。
どんなときに相談すればいい?
強い眠気で仕事や授業に支障がある、大きないびきが続く、寝ている間の呼吸停止を指摘された、眠れない不安が続く。そんなときは、スコアを待たずにご相談ください。
運転中に眠くなる場合は運転を控え、早めに医療機関へ相談してください。受診時は、気になる画面だけでなく、普段の睡眠時間や休日との差、服薬、飲酒、症状が出る場面を伝えると役立ちます。時計を持っていなくても、睡眠日誌やメモで相談できます。
スマートウォッチは、毎日の変化に気づくための心強い道具です。数字と体の実感を合わせて振り返り、必要なときは検査につなげる。眠りを採点し続けるより、暮らしを整えるために記録を使っていきましょう。
参考文献・出典
本記事は一般的な医学情報をお伝えするものです。個別の診断や治療は、症状や検査結果をもとに担当医とご相談ください。


