高血圧と睡眠時無呼吸|下がりにくい血圧と夜の呼吸を睡眠専門医が解説
健診で「血圧が高め」と言われても、体調に変わりはない。薬を飲み始めたのに、なかなか目標まで下がらない。家族からはいびきを指摘されている。こうした方に知っておいてほしいのが、血圧と睡眠中の呼吸の関係です。高血圧の基本と減塩のコツから、下がりにくい血圧の背景に隠れていることがある睡眠時無呼吸症候群まで、順に説明します。
まず押さえたい、血圧と睡眠の4つのポイント
血圧は、生活習慣と薬の治療に加えて、睡眠の面からも見直すことができます。まず血圧を測って自分の状態を知り、減塩や運動で生活を整え、治療を続けます。そのうえで、いびきや日中の眠気がある方は、睡眠の問題がないかも確認してみましょう。

図の4つは、どれか一つで代わりになるものではありません。睡眠の検査や治療を始めても、血圧の薬や生活習慣の見直しは続けます。
症状がなくても、血圧の管理が大切な理由
高血圧は、ほとんど自覚症状がないまま進むことが多い病気です。日本では高血圧の人が約4,300万人と推計され、そのうち血圧が目標まで管理できている人は3割程度にとどまるとされています。とても身近な病気でありながら、治療につながっていない人も多いのが現状です。
血圧が高い状態が続くと、血管の壁に強い圧力がかかり続け、血管が傷ついて硬くもろくなっていきます。これが動脈硬化です。その結果、脳では脳出血や脳梗塞(脳卒中)、心臓では心不全や心筋梗塞、腎臓では慢性腎臓病が起こりやすくなり、腎臓の働きが大きく落ちると透析が必要になることもあります。

「元気だから大丈夫」ではなく、症状がなくても血圧を測って確かめることが大切です。健診で高めと言われたら、家庭でも血圧を測り、記録を持ってかかりつけ医に相談しましょう。
血圧の目標は、測る場所で違う
治療中に目指す血圧の目安(降圧目標)は、日本高血圧学会の「高血圧管理・治療ガイドライン2025」で、診察室で測る血圧が130/80mmHg未満、家庭で測る血圧が125/75mmHg未満とされています。家庭の数値の方が低いのは、家ではリラックスした状態で測るためです。

ここで示す数値は、治療を受けている人が目指す目安です。高血圧かどうかを診断する基準とは別のものです。また、目標の数値は、年齢や持病、薬の副作用の出やすさによって個別に決まります。自分の目標がいくつなのかは、主治医と確認してください。急に下げすぎると、ふらつきなどが出ることもあります。
減塩は「1日6グラム未満」が目安
血圧を下げる生活改善の中で、まず取り入れやすいのが減塩です。ガイドラインでは、食塩は1日6グラム未満が目標とされています。日本人は食塩をとりすぎる傾向があり、6グラムは小さじ1杯強ほどの量です。ほかにも、野菜や果物を多めにとる、適正体重を保つ、有酸素運動を習慣にする、お酒を控えて禁煙する、といった生活改善を組み合わせます。
塩分が特に多くなりやすいのは、次のような食品です。少ない量でも塩分が多くなりやすいので、食べる頻度や量を意識してみましょう。

例えば、ラーメンやうどんの汁を全部飲み干すと、それだけで1日の目安を大きく超えてしまうことがあります。まずは「麺類の汁を残す」「漬物や加工品を毎食にしない」など、続けられる一つから始めましょう。
おいしく減塩するコツと、運動の続け方
減塩というと味気ない食事を想像しがちですが、塩だけに頼らず別のおいしさを足すのがコツです。レモンやゆず、お酢の酸味を効かせると、塩が少なくても味が引き締まります。カレー粉やこしょう、しそやしょうがなどの香りを足すのも効果的です。かつおや昆布のだしを濃いめにとると、うま味で満足しやすくなります。

みそ汁は具だくさんにして汁の量を減らし、調味料は上からかけずに小皿につけるようにすると、自然に塩分を控えられます。野菜や果物に多いカリウムには、余分な塩分を体の外に出すのを助ける働きがあります。ただし、腎臓の病気がある方や、カリウムの制限を指示されている方は、野菜や果物の量を主治医に確認してください。
運動は、ウォーキングのような有酸素運動を、無理のない範囲で続けることが大切です。急に頑張りすぎて疲れてしまうより、毎日少しずつ続ける方が長続きします。食事と運動の積み重ねが、時間をかけて血圧を下げる力になります。持病がある方や、運動で胸の痛みや息切れが出る方は、始める前に主治医に相談しましょう。
薬を飲んでも下がらない血圧と、睡眠時無呼吸
生活を見直し、薬も飲んでいるのに、血圧がなかなか下がらない方もいます。3種類以上の降圧薬を使っても目標の血圧まで下がらない状態を「治療抵抗性高血圧」(難治性高血圧)と呼びます。薬の飲み忘れや塩分のとりすぎのほか、ほかの病気が原因で血圧が上がる「二次性高血圧」が隠れていることもあります。
日本の睡眠時無呼吸症候群の診療ガイドラインでも、睡眠時無呼吸は二次性高血圧の原因の一つに位置づけられています。薬を増やしても血圧が下がりにくいときは、睡眠中の呼吸を調べるという視点も持ってみましょう。
夜の無呼吸で、血圧が上がるしくみ
睡眠中に呼吸が止まったり浅くなったりすると、体の中の酸素が減り、脳が一瞬目を覚ますような反応が起こります。すると、体を緊張させる交感神経が強く働き、血管が縮んで血圧が上がります。これが一晩に何度も繰り返されます。

本来、血圧は眠っている間に下がるものです。ところが無呼吸があると夜の血圧が下がりきらず、毎晩の負担が続くうちに、昼間の血圧まで高くなっていくことがあります。夜間や明け方に血圧が急に上がる現象は、心臓や脳の発作の引き金の一つになるとも考えられています。
無呼吸の治療で、血圧はどう変わる?
睡眠時無呼吸が血圧を押し上げている場合は、無呼吸の治療によって血圧の改善が期待できます。代表的な治療がCPAP(シーパップ)です。寝ている間に鼻から空気を送り、のどの空気の通り道を広げて、無呼吸を減らします。

無呼吸の治療を始めても、血圧の薬を自己判断で減らしたり、やめたりしないでください。CPAPは血圧の薬の代わりではなく、無呼吸そのものを治療し、日中の眠気や睡眠の質の改善とあわせて血圧管理を支える治療です。血圧の推移を見ながら、薬の調整は主治医が判断します。
いびき・眠気があるときは、睡眠も相談を
すべての高血圧が睡眠時無呼吸のせいというわけではありません。また、いびきがあれば必ず睡眠時無呼吸というわけでもありません。そのうえで、次のような症状が重なっている方は、一度睡眠についても調べてみる価値があります。
睡眠時無呼吸の検査には、自宅で行う簡易検査や、医療機関で一晩かけて詳しく調べるPSG(終夜睡眠ポリグラフ検査)があります。受診の際は、家庭血圧の記録、飲んでいる薬(お薬手帳)、家族から見たいびきや呼吸の様子をメモして持っていくと相談が進みやすくなります。眠気が強いときは運転を控え、運転中に眠くなったら安全な場所に停車してください。
血圧と睡眠は、思っている以上に深く関わっています。まずは血圧を測ること、汁を残すなど続けられる減塩から始めること。そして、いびきや眠気がある方は、血圧の薬だけでは見えなかった手がかりを探すつもりで、睡眠についても相談してみてください。
参考文献・出典
- 日本高血圧学会|高血圧管理・治療ガイドライン2025(降圧目標・減塩・生活習慣の修正)
- 日本呼吸器学会 ほか|睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020
- Pedrosa RP, et al. Obstructive sleep apnea: the most common secondary cause of hypertension associated with resistant hypertension. Hypertension. 2011;58(5):811-817.
- Martínez-García MA, et al. Effect of CPAP on blood pressure in patients with obstructive sleep apnea and resistant hypertension: the HIPARCO randomized clinical trial. JAMA. 2013;310(22):2407-2415.
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断・治療に代わるものではありません。血圧の目標や薬の調整、食事制限は、年齢・持病・治療状況によって異なります。必ず担当医にご相談ください。


